思索と妄想

石井和沙(いしいかずさ)/イサイシズカの雑記

映画『スポットライト 世紀のスクープ』鑑賞

カトリック神父の子供への性的虐待事件を追うジャーナリズムの物語。事実に基づく社会派ドラマ。

非常に硬派で真摯な映画だと思いました。映画として優れていることに異論の余地はないと思いましたが、僕個人としては、内容に関してはそれほど衝撃を受けませんでした。

第一には、これはたぶん日本人のほとんどが同じだと思いますが、非キリスト教圏かつ信仰心の希薄さで世界有数の日本では、信仰への揺らぎというアイデンティティ・クライシスに共感したり実感を持ったりすることは非常に困難だろうということ。少なくとも僕は、寺の住職がそういうことをしてたとしても、「寺の住職だから」という理由でその人たちが倫理にもとる卑劣な犯罪を犯すはずがない、なんてまったく思わないし。うちの実家が檀家になってるお寺さんの坊主が下着ドロで捕まったときも特に思うところはなかったなあ。

あとは、僕は大学時代哲科で古代・中世神学を中心に勉強してたので、こういう言い方は何ですが、カトリック教会のアレな部分なんて嫌ってほど知ってたというのが大きいかも。すでに古代のころから修道士の男色なんて当たり前だったし、アウグスティヌス『告白』の前半生とか正直ドン引きするレベルだし(勿論、現代のコモンセンスから見た場合ですよ)。

生物としての自然欲求をこれでもか!これでもか!ってくらい否定し抑圧する創唱宗教は、カトリックに限らずどの宗教でも似たような「歪み」は生じざるを得ないと思うところです、原理的に。だからこそこの映画の中でも、根本的な問題は神父個々人の資質というよりは、それを隠蔽する組織のシステムやドグマによって必然的に発生した「現象」だと言っていたわけです。

この手の話なんて考え出したら言いたくなること沢山あるけど、何事もほどほどが一番だよねっていうのが今の僕の気分。